Palcon建築記録 


  

その時、気密測定器が動いた (今回もNHK風)

 

今週の「その時」→ 2006.4.25(火)11:00AM 気密度測定開始

近年では様々なハウスメーカーが高気密高断熱住宅を謳うようになり、気密度と気密測定への関心も高まっています。公庫基準は相当隙間面積(C値といっていわば漏れ穴の面積)が5.0cm2/m2以下を高気密住宅としているので、それより低い数値でなければなりません(省エネルギー基準になっている)。

大成建設では木質パネル工法の空間王の場合、社内基準を2.0cm2/m2以下と定めており実測した結果がそれより低ければ気密補修工事(原因をつきとめて手直し)して再度測定し、検査を合格させることになっています。対して、私の家のような「Palcon」の場合は気密度が高いのが前提のため測定することすら無いのだそうです(ありゃま!)。しかし、そこを曲げて営業のO氏に気密度測定やりたいんですけど、と申し出たところ「Palconでは珍しいです、私も結果に興味があります」とのこと。あえて家右衛門邸では測定に踏み切りました。そしてあれこれ気密度測定について調べてみると意外な事実が明らかになってきました。今週はその住宅気密度に焦点をあてて、知られざる高気密度の世界を浮き彫りにしていきたいと思います(NHK 松平アナウンサー風)。

 

どれどれ、さっそく測定担当者が準備をはじめているようです... 。

  

 【高気密高断熱の目的と効果】
・熱損失を減らす(冷暖房の効果を漏らさない)
・内部結露の防止/壁体内結露の防止(カビなどの防止)
・正確な計画換気(新鮮な空気の入れ換えを行う/化学物質の排気)
・遮音(音漏れを低減する効果もある)
 

え? 上記のような知識は皆さんすでに御存知ですと? そうですねぇ、最近の家はほとんど高高住宅なんですよ、これが。

でも、我が家の内装が終わってほぼ完成に近づいたとき「網戸」が取り付けられているのを見た私の複雑な心境を御想像ください。ウチでは細窓は基本的に採光用ですから個人的にはすべてFIX嵌め殺し(FIX)でもよかったのです。窓なんて開けるのかな? しかし何度も現場を訪れているうちに気付いたことがあります。立地の環境としてはもともと静かな地域で、東京といっても郊外ですから空気もさほど汚れておらず小鳥のさえずりもきこえます。こういった環境下であればたしかに窓を開けるというのも心地良いものです...... ま、いいか。

  

世界的なレベルで省エネ基準を比べた場合、スゥエーデンやカナダの基準からすると日本の基準はその半分以下でゆるいのが現状です(2006年11月現在)。いまだにカナダ並の基準が設定されていないのは、おそらく日本では現場の施工が甘いせいでしょうか? カナダやスウェーデンは寒冷地で夏が短いためそういった地域の住宅基準を必ずしも日本の住宅を比べてはいけないのですが(事実、知り合いのスウェーデンの輸入住宅は高気密高断熱ですが夏は外気が侵入して暑くて地獄だそうです)、やるなら国を挙げて徹底してやるという点に基準設定の姿勢が大事だと思います。高気密高断熱は日本では北海道が発端といわれています。事実、今回の計測器も札幌の会社が開発したものです。隙間風で暖房の効果が落ちないように... 北海道に限らず寒冷地ではとても重要なことです。凍死しちゃかなわん。

 

R2000(1990年):カナダ政府の制定した世界最高レベルの基準
 カナダR2000基準1.0cm2/m2 (1.5 回/h/50Pa)
 
スウェーデンの2階建て住宅の基準値は1.2cm2/m2
 
 
日本の省エネ基準
・旧基準(1980年):日本で初めて設定された省エネ基準(数値不明)
・新基準(1992年):さすがに国際的に恥ずかしい低基準であったものを改定した(お粗末なので数値不明ってコトにしとく)
・次世代基準(1999年):断熱材の厚み等が数値化され換気が義務付けられた(現在の基準)5.0cm2/m2以下
 
 
 【計画換気】
・24時間365日換気する
・給排気位置を効果的に明確にする
・員数規模 建物規模 部位別規模を計算して換気量を設定する
 

タルカス本体に近い部屋では風量が強いです。逆に遠くなると柔らかい風がダクトから吹出してきます。松下の担当者にきくと風力や風量ではなく「換気量」を確保することが重要なのだそうです。なお、タルカスによって入れ替わることによる熱量変化は1/7程度と耳にしたことがあります(正確な情報をお持ちの方は教えてください)。

窓の数が多かったり、窓の面積が広い場合は当然ながら熱損失は大きくなります。同時に気密度を下げる原因の「わずかな隙間風」もサッシのレール部分にあります。また、引き違い窓よりも前面へ開くタイプのほうが4倍も気密性能が高いといわれています。我が家も引違い以外の構造の窓を考えた時期がありましたが予算的な都合もあって引き違いの腰高窓になりました。
以下は大成建設のオフィシャルサイトに掲載されている説明文↓

 

■冷暖房の熱を逃がさない、

高レベルを誇るパルコンの気密性。

断熱性がどれほど高くても、気密性が低ければエアコンなどで冷暖房した空気が外部へ逃げてしまいます。パルコンは相当隙間面積=C値が低い高気密な家。その気密性能はサッシュに「自然換気口」を設けた自然換気方式の場合、実測データの平均で床面積1m2あたり約2.9cm2。自然換気口を設けず「タルカス-e」の様な強制給排気型換気システム(第1種換気)とした場合は1.0cm2以下と極めてハイレベルな気密性能を実現しています。どちらの場合も特別な気密工事を施すわけではありませんから余分なコストは不要。年月とともに性能が低下することもありません。このような優れた気密性能があってこそ、住宅初のシーリングダクト(ダクトレス)方式によるオリジナル循環型換気システム「タルカス-e」も装備できるのです。

  

 


 

何が問題なのか?

さて、測定の条件が問題なのです。多くの建築関連ホームページやブログでも測定結果が掲載されており、基本的に2.0cm2/m2を下回る結果が堂々と記されていますが、多くの場合、詳細な測定の条件は書かれていません。はっきりいって大手ハウスメーカーであってもそんなものを信用してはイカンのです。

通常は建方で躯体が組み上がって断熱材が貼られた状態で測りますが換気扇やダクト類、ドアなどに目張りをして、台所のシンクにも水を張って測定しちゃってることも多いのです。なお、測定ののち建物の完成までの期間に変更が生じて穴を開けたりすることは頻繁に行われているわけですから完成したときには気密性能が変わっていることはおおいに有り得ます。エアコンのダクトを開けてももちろん漏れます。そこで最近では施主の風当たりが強くなってきてゴマカセナイと反省したのかどうか、竣工時点で気密測定するハウスメーカーも増えているわけです。

家右衛門邸では換気口などには一切の目張りをせず、まさに完成してこの家に生活しているような状態で測りました。しかも台所の換気扇や建築基準法で定めている「自然吸気口」も塞いでいません(これだけでもかなりの隙間です)。すべてのドアや窓の鍵穴や台所のシンクなどもふさがずに、かなり漏れている状態で測っていますから、そういった箇所を塞ぐとおそらく測定限界以下になってしまうものと思われます。なお、測定にやってきた担当者の話では本来、パルコンに限らずマンションのようなRC住宅ではちゃんと施工してあれば公庫基準の半分以下の2.0cm2/m2ぐらいの数値が出るのが普通なのだそうです。

 

換気扇や鍵穴、台所のシンクの栓まで塞いで測るのは超反則! ケシカラン!

 

ハァ!ハァ!..... 久しぶりに鼻息が荒い家右衛門です。あきれてモノが言えません。どこに換気扇や鍵穴を目張りして暮らす人がいますか? 日常の生活空間の快適さを比較しようというときに日常性を逸脱してまで測定値を飾りたいのか? そこまでやって高気密住宅を謳うハウスメーカーの作為的な姿勢は理解できません。

 


 

イザ!気密度測定!

 

さて、我が家のPalconの計測状況です。使用する住宅気密測定器は「アメニティエアロテスター」といってKONA Sapporo社の開発したもの。

ファンは三菱製です。車輪が外れて母子をひき殺す心配もありますがこの装置には車輪は付いていないようでひとまず安心。

  

測定のしくみ

部屋の窓と玄関扉を閉めて一つの窓にビニールシートで覆い測定装置を取り付けます。装置にはプロペラファンとセンサ類が付いていてコントローラ(計測器)に配線とチューブでつながっています。

ファンを廻せば建物内の空気は装置を通って外へ排出されますが完全気密だと建物がしぼんでしまいます(まさか)。実際には建物の随所にサッシの隙間や換気扇の設置個所にわずかな隙間があるのでそこから外気が侵入しているわけです。そっとファンを廻して排気したときの漏れ具合を測ります。同様に少しファンを強く廻して排気したときの漏れ具合を調べます。同様にファンをさらに強く廻して漏れを調べる....といった具合です。全部で5段階のファンの強度を変えてそれぞれの漏れの程度を平均した結果を得るというものです。グラフがリニアな特性(直線的)になればOK。

 

 

測定機器:アメニティエアロテスタ KNS-5000C(KONA Sapporo Co,.LTD)Ver2.1 

・減圧法:現在最も一般的なのが減圧法。加圧法は装置を屋外側に設置して建物を風船のようにふくらます。
・C値(相当隙間面積):0.6cm2/m2
・Q9.8(通気量):91.9m3/h
・室内温度:16.3度
・外気温度:15.0度
・測定圧力範囲:12.3Pa〜48.9Pa
・述床面積:99.36m2
・屋外も屋内もほぼ無風状態:1cm2/m2以下の測定では6m以上の風が吹いた時に風の影響を受けるとか
・台所等の換気口、鍵穴、台所シンク、などには一切の目張りせず
・タルカス:もちろん運転状態で計測
・法定の自然吸気口も開放状態(外気がどんどん入ってくる)
・その他の条件は下図の記載事項を参照

 

【気密測定の結果:家右衛門邸 Palcon ジェニック】

はい、そしていよいよ今回の「その時」がやってくるのであります。

結果、家右衛門邸は......0.6cm2/m2となりました。以下に測定結果のプリントアウトのコピーを掲載しておきます。反則の目張りは一切無し。このデータ以外にも何度も計り直してもらったので間違いありません。5.0cm2/m2をはるかに下回る結果で余裕ですね。むしろスウェーデンやカナダの基準を上回る驚異的な気密度です。ちなみに一般の在来工法による住宅では10〜20cm2/m2程度になることが多いとのことです。

 

 

 

測定メモ

 

・測定担当者いわく「パルコンは普通は測定しない」。過去に数回測ったことがあるが、いずれも1.0以下(たいてい空間王の半分)とのこと。

・空間王だと基準は2.0cm2/m2以下が社内基準で実測は1.5〜1.6cm2/m2となるのが一般的とのこと。

・室内温度と外気温度も測っています。厳冬期に屋内で暖房すると屋内の空気が熱で膨張して家の隙間から外へ出ようとします、そのため隙間があっても外気が入ってきづらいので正確に計れないというワケ。30度差がある場合は日をあらためて測定したほうがいいらしいです。30度以下でも温度補正は装置で行われています。

・建物の外で風が吹くと測定結果に影響してしまうのでこれも補正して計測しています。グラフ化して両対数グラフで表示するのは測定結果が風の影響などで不安定に測定されていないかチェックするため(人間の五感は対数的であるため対数軸Logの目盛のグラフでは傾きを持つ直線でプロットされるはずなのです)。

・あとで施主へ報告書が提出されることになっています(後日たしかに頂きました)。

 

 

 

台所の換気口など塞いで測ってみようかな?とも思ったのですがバカバカしくてやめました。ふだん生活する状態で1.0以下なら充分。むしろ10年後や20年後に今回と同じ条件で測定してみることに興味があります。

ただ、建物は総合的に評価せねばならず、たんにC値が低いだけではダメで、冒頭で列挙したように気密性能が高くても窓の断熱性能が低かったり確実な計画換気がなされていないとあまり意味がないのです。また、新築の時点で低C値を実現しても経年変化で劣化したら無意味(木造住宅では経年劣化が大きい)。同時に省エネのためだけではなく室内の空気の入れ換えとフィルタ機能による浄化作用、そのほか遮音効果も重要な注目点です。

測定は装置を取り付けて数分で終わるのでぜひ皆さんも御自宅の気密測定をしてみてはどうでしょう? 特別な準備がいるわけでもありません。ほんの1時間もあれば終わります。

 

さて、パルコンは低断熱・中気密住宅と疑った人もいましたが、気密性については、それは間違いであることがわかりました。このページの冒頭でも説明したように公庫基準の相当隙間面積(C値)が5.0cm2/m2以下を高気密住宅としているので、パルコンの0.6cm2/m2は圧倒的な超高気密住宅ということになります。加えて言うならば壁に付いている自然吸気のダクトから外気が大量に室内に入って来ます。これはかなりの量です。この自然吸気口(直径15cmフィルタ無し)を塞ぐと測定結果は 0.6cm2/m2の半分以下になって測定不可能となることすら容易に想像できます。それくらいパルコンは他社と比較にならない高気密住宅なのです。 たぶん個人向けの住宅(商品)としてはヒストリカルなレベルにあると思います。

 

 

今回は以下の測定中のハプニングを回想しながら「その時、気密測定器が動いた」をお別れしたいと思います。
また次回お目にかかりましょう。今回も御覧いただきありがとうございました。(再びNHK松平アナウンサー風)。

(♪エンディングテーマ)

 

 

・測定中に圧力が急にピクッ!と下がりましたた....ややっ!? パルコンがしぼんで壊れたか!? と思ったら三国蓮太郎が再登場! そうなんです、今日は竣工(社内)検査も同時にやっていて屋内をチェックしていたらしく、2階の採光窓を少し開けたとか......... 測定やりなおし(笑)。

 

  


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