■ 耐圧盤(ベース)のコンクリート打設
2006.1.26(木) 晴れ 気温7度
さて、いよいよ今日は基礎の打設です! 鼻息を荒くして注目します(笑)。配筋の是正の件といい、どうして私が基礎にそんなに神経質になるのか不思議に思われる方もいるでしょう。しかしパルコンは基礎だけは現場でコンクリートを打設し、上モノはプレキャストのコンクリート壁です。つまり家の躯体(主な構造体)は工場生産品(お国の認定品)なので現場打ちの壁とは品質の信頼度が違います。私が他のコンクリート住宅にしなかった大きな理由がここにあります。現場でコンクリートを打設するということがいかにリスクが大きいかを私は理解しています。施工者の知識や熟練度によってコンクリートの強度と耐久性にまったく差が出るからです。高いお金を出しているのだから自分の家だけは熟練職人が丁寧にやってくれるなんて思ったら大間違い。品質を確率にゆだねるのはやめたほうがいいです。家右衛門語録に追加しておきましょう、
「家作りでギャンブルはやめよう」
ですからパルコンは基礎部分だけが現場打ちなのでシース筋を含めた配筋と型枠工事、そしてあとは基礎のコンクリートが硬化する環境(気象条件など)が大きな鍵になるのです。神経質にもなりますよ。現場にはたとえ仕事で遅くなった夜中でも毎日のように出向いてチェックします。天気だけはどうしようもありませんので天にまかせつつ、監督と相談しながら必要に応じて行程をずらします。基礎と建方さえうまくいけばあとは内装や電気工事、空調、照明設備、外構工事など、あとからいくらでも手直し可能なのです。
さて、ちょっと前置きが長くなりましたがまずはケレンを使って雪の除去作業です(次の写真を参照)。配筋の底に雪が残っているので厄介。しかも踏み入った部分の雪は硬くなっていてそれを剥がしてやらねばなりません。ホースで散水しつつ監督さんがゴミも除去してくれています。配筋の点検など、あいかわらず自分の手を積極的に動かして丁寧にやっていただいてます。
作業員がいじけているわけではありません。配管あたりの雪を手でかき出しているようです。寒さで手がかじかむでしょうに、ごくろうさまです。
不要な結束線や釘やゴミもたくさん落ちているので除去しておかねばなりません。よく家づくりの本などで現場が汚いときは良い仕事をしていない証拠と書いてありますがどうなんでしょう? 周囲の建築現場にそんなところはありません。大手だろうが地元工務店だろうがみんな散らかってます。本に書いてあることが本当ならみんなが悪い仕事をやっていることになりますが.......。
充分に散水しています。雪がなくても捨てコンクリートとなじませるために散水する必要があるそうです。そろそろ除雪作業は開始から2時間ぐらいかかったでしょうか。やがて雪の除去が完了しました。
監理会社のM氏いわく「雪が解けないうちは打設させない!」ということで今日は立ち会っているとのこと。う〜〜ん、さすが。今日のM氏は大きく見えます。身長が15cmぐらい伸びているもしれません。
現場にポンプ車とミキサー車が到着。オペレータが準備をはじめます。納入書を見ると今回使用するコンクリートの素性がわかりますので記載事項を順にチェックしていきましょう。
・納品日:今日の日付(2006.1.26)
・番号(No.):「5」というのは5回めの出荷ということで、この納入書はじつは最後の1枚です。No1から順にNo5まで納入されました。
・製造工場:日本工業企画JISの認定工場でコネられたコンクリートです。JIS認定ならどこのプラントも同じ品質かというと実際には品質監理に差があってバラつきがあります。
・納入場所:もちろん家右衛門邸となっています。
・運搬車番号:工場から運び出したのはどの車両かを判別するものでとくに意味はありません。ヘマをやったら運転手が誰かぐらいはわかるのでしょう。
・納入時刻:コレ大事。コンクリートは製造した直後から固まりはじめるので、とくに夏場は交通渋滞や受け入れ検査でモタモタしていると硬くなってしまいます。工場を出た時間から受け入れた時間が記されています。一般には90分以内に打設を終えなければなりません。
・納入容積:0.5立米(リューベ:立方メートル)。そして5台目までの合計が15.5立方メートルです。ベースはたくさんのコンクリートが必要なので5台で運搬しましたが立上がりでは1台で充分でしょう。ウチはちっちゃい建物なのでさほどコンクリートはいらないのです。
・呼び方:種類は「普通」、できれば「特別」が欲しかった(^_^)
・呼び強度:寒いので短時間で強度が出るように呼び強度は今回は33です。これは伝票を信用するしかありません。プラント(セメント工場)で33 にてブレンドして出荷したものです。
・スランプ:水とコンクリートを混ぜればその比率によってゆるいミルク状になったり硬めのポテトサラダ状になったりしますが数値が大きいほどやわらかく数値が小さいほど硬いと覚えておきます。今回は監督さんの言うように15で発注してあるようです。
・粗骨材の最大寸法:セメントと混ぜ合わせる砕石のサイズが2cm以下となっています。これが大きすぎれば鉄筋にうまく流れ込まず隙間を生じるなどの問題が生じます。
・種類:NとはニッポンのNです(ウソ)。
・指定事項:年齢32歳未満は使用禁止という意味です(もちろんウソ)。混和材料についての付記があればいいんだけどなぁ...。
この季節にこの地域だと寒中コンクリートというヤツですね。寒中コンクリートとはエンジンブレーキのようなものでお店で売っているものではなく、寒いなかで打設する手法を意味します。「寒中水泳」と似たような語句の扱いです。作業する季節(期間)や地域によってコンクリートの補正値が決まっています。詳細の一覧表があったのですが文献がどこかにまぎれてしまい発掘できませんがネット上にも出ていたはずです。調査したところ気温5度前後の寒い時期のほうがコンクリートは強度が出やすいようです。
【コンクリートの実体検査】
納入書に記された上記項目および他の確認すべき性質を知るために現場でコンクリートを採取して検査します。
但し、監理のM氏いわく、
「一般の住宅ではコンクリートの受け入れ時に試験することはほとんど無い、オプションで依頼することは可能。あるいはコンクリート工場の検査室で採取したものを知らせてくれることはある。」
とのことです。ハウスメーカーや地域によって検査するかどうかは異なるようです。
さて、検査の内容について解説しましょう。試験道具一式を積んだ車が現場にやってきてミキサー車からシャベルで猫車(深ネコ)へコンクリートを少量取り出します。つまりサンプリングですね。一般的には最初の1台めから採取しますので2台目以降の品質はどうなるのか? そんなことは知りません。信用するしかありません。
【スランプ試験】
コンクリートの柔らかさをスランプ試験にて行います。スランプ試験は細長いバケツみたいな容器にコンクリートを詰めて平台の上にエイヤッとひっくり返して置いてプッチンプリンのようにそっと容器を上に引き上げればコンクリートがプリンみたいに現れ、同時にヘナヘナと平台上でうなだれるのです。そのへこんだ深さ(cm)が大きいほど柔らかい(スランプ値が大)ということになります。いわば野球のピッチャーが慢性的に制球に苦しみマウンドでガックリ肩を落とす、そのときの肩の下がりぐあいをcmで測って表現しているわけです。スランプの度合い:肩の落ちた量が大きいほど情けない状態ということです(なんてわかりやすい説明でしょう)。
世間ではレディミクストコンクリートの場合はスランプ20cmぐらいのユルユルであることが多いといいます。そのほうが作業がしやすいのです(ワーカビリティが良いなどと表現)。今回は納入書を見てもわかるように注文したのは15ですが試験したら多少やわらかくて16.5cmでした。公的な許容度がたしか+-2cmぐらいだったと記憶しているのでまぁ、よしとしましょう。 17でもけっこう硬い部類です。文献によると水セメント比を40%にするのが理想らしいですが現実には50%〜60%であり、簡単にはいきません。
同時に現場の気温とコンクリート自体の温度も測ります(コンクリートに温度計が刺さっているのを写真で確認してください)。セメント石灰成分と水が反応して硬化(水和反応)するときに発熱するんです。文献で調べたところ冬期は気温より3度ぐらい高くなり夏は60度〜90度にもなるそうです。おせんべいの防湿剤に水をかけると熱が出るのに似ていますね、やったことありますか?
【圧縮強度】
上の写真の青いケース内に6本の水色の円筒形の容器が見えるでしょう。コンクリートを詰めて試験場へ持ち帰ります。そして1週間後にどれくらい硬くなったかを試験機にかけて潰します。そのときの強度がわかりますので現場のコンクリートもほぼ同程度に硬化していると考えるわけです。残りの3本は4週間後に潰して試験します。打設後に徐々に硬度が高くなっていき基準を満たしたコンクリートになっていくのかどうかを確認するわけです。
【塩化物量試験】
ソルコンという計測器を使います。おそらく「ソル」はソルト(塩:solt)から由来した製品名でしょうか。となると「コン」はパルコンから由来したものでしょう(大嘘)。ほかにもカンタブといって試験紙を使う簡易的な検査方法もありますが計測器では手間と時間がかかるものの精度が高いので今回はカンタブは使いません。ちっちゃいバケツにコンクリートを入れて試験用のプローブ(センサ素子)を刺して表示を読みとります(写真は検査後なので数値はいいかげん)。管理のM氏の話では全く問題ない値が出ていたとのこと。他にも空気量試験などが行われました。
検査結果についてはあとで報告書をもらおうと思います。
【打設開始】
太いホースからコンクリートが流れ出てくるのでどんどん型枠内へ打ち込みます。作業員は手際よくこなしているようです。
耐圧盤にコンクリートを流し込んでいるところです。シャベルとトンボでならしてバイブレータをかけています。ホースを抱えているポンプ親方は腰にベルトでワイヤレスのリモコンを装着していて、時々ポンプ車のアーム位置やら流量を変えて作業しています。上の写真の親方のオナカのあたりを注目あれ。これを業界では「ポンプタイフーンベルト」と呼びます(ウソ)。
全域に打ち終えたらトンボ(タンパー)でならしてほぼ平坦に仕上げます。少し固まってからバイブレータで再振動をかければ流動化して余計な空気や水分が浮上するらしいのですが、あとでやってくれるのかな? 現場には謎めいたツールがたくさんあります。なかでも私の目をひいたのが逸品がコレ、「水蜘蛛」いや、それとも「かんじき」と呼ぶべきでしょうか。ちょっと欲しい.....。
というわけで打設が終わりました。このあと養生します。ブルーシートで建物全体を包んでビニールハウスのようにするのです。この作業を見ていた監理会社のM氏はア然として、
「ふつうはベースに養生することは まず無い。」
とのこと。執拗にウルサイ施主のせいでしょうか(笑)。心配性のシロウト施主なので余計なことをたくさん要求しているようで、ひょっとして迷惑がられているのかもしれません。おかげで?異常ともいえるような丁寧な作業を施していただいているようで、ありがたいことです。今後は「姓は迷惑、名は家右衛門」と名乗ることにしましょう。
すでに陽が落ちはじめて暗くなり気温も下がってきました。最近の気温は昼間は5度前後ですが夜はマイナス4度ぐらいになります。東京のこの地域では約20年ぶりの記録的な寒さ。コンクリートの内部が凍結することはないでしょうけれど表面は時に凍結することがあるようです。管理のM氏によると凍結した場合は表面部分のコンクリートを剥がして修正する方法も有るらしいのですが、凍らないにこしたことはないです。ここは用心してブルーシートで保険をかけるのです。コンクリートは硬化の初期段階が最も重要といわれています。
小さい家とはいいながらも養生シートで覆うのは容易ではありません。作業員3名のほかS監督と監理のM氏も総動員して覆ってもらいました。施主の私はもちろんのんびり傍観しつつ撮影係です(おいおい....)。
ベース部分は隠れて見えませんがシステムフロアにして床下収納するので表面はそこそこ滑らかにしておいてほしいものです。作業員がコテで丁寧にならしてくれています。
というわけでベースコンクリートの打設を完了しました。このあとは基礎の立ち上が部分(内側)の型枠を組み、立ち上がり部分のコンクリート打設へと作業が進みます。
前にも書きましたが内装や屋内配線などはやりなおしが効くことがほとんどですが、基礎〜建方の行程はそれが困難なため非常に重要です。コンクリート住宅ですから当然私としてはコンクリートについて文献やサイトを調査して勉強します。シロートであってもトラブルが起こらないよう対策できるものならなんとかしたいとの思いから可能な限りの努力をします。現実にはコンクリートというのはじつにデリケートで気難しいマテリアルであり施工についても緒論あります。調べれば調べるほど謎も噴出します。仕事の合間をぬって勉強するにも限界があります。付け焼き刃の知識ではありますが、しかしそれでも予備知識をもって工事に臨むつもりです。注文住宅というのは施主が自分の責任で積極的に思考して作っていく、私はそういうものだと考えています。
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